恋人ができても、外食一回で平気で7000円が飛んでいく。映画の前にカフェへ入っただけで諭吉が一枚消える。そんな感覚に身に覚えがあるなら、この記事はあなたのために書いた。物価高の令和を生きる20代から30代のカップル、もしくはこれから誰かと付き合おうとしている男女に向けて、デート代という地味だけれど関係について話そう。
物価高の時代に、デート代の話を避け続けることのコスト
沈黙は関係を温存しない、削っていく
恋人とお金の話をしたがらない人は多い。下世話だとか、夢がないとか、そういう理由で先延ばしにされる。私はその姿勢を強く疑っている。むしろお金の話を避けてきたカップルほど、半年後にぎくしゃくして、一年後に静かに別れる。お金は感情そのものを乗せた媒体だからだ。
数字が物語る令和の家計圧迫
総務省統計局が2026年1月に公表した2025年平均の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合で前年比3.1パーセント上昇となった。2024年の2.5パーセントを上回り、4年連続の上昇である。食料の伸びは7.0パーセントで、コメ類は67.5パーセントという尋常でない数字を叩き出した。おにぎりひとつ買うだけで、二年前と懐の体感が違う。給料は上がってもじりじり、外食の伝票を見るたび心がずしりと重くなる。これが令和の現実だ。
デート代の話を避けるというのは、この現実を見ないふりすることと同義になる。話さない選択は、いまや関係を温存しているのではなく、確実に削っている。
令和のデート代リアル、2024〜2025年の物価と外食費の実態
値上げは一過性ではなく構造として張り付いた
帝国データバンクの調査では、2025年の飲食料品値上げは累計1.5万から2万品目に達する見通しで、1回当たりの平均値上げ率は16から18パーセント。原材料高に加え、人件費由来の値上げが集計開始以来初めて全体の半数を超えた。物流費由来も79.4パーセントで過去最高となっている。
外食チェーンの値上げ事例
すき家の牛丼並盛は2025年3月に450円から480円へ上がり、マクドナルドも同月に一部商品を10円から30円引き上げた。ガストは2024年11月に約6割のメニューを改定し、2025年4月にも卵関連商品で再値上げ。日高屋は2024年12月に全店で3.9パーセントの値上げに踏み切った。為替は2025年春時点で1ドル150円台に張り付き、ワインもパスタもチーズも、輸入食材を使う洋食バル業態の原価はじわじわ膨らんでいる。
デート代そのもののリアル金額
リーディングテックの調査では、1回のデートで個人が支払う金額は男性平均6805円、女性平均2612円、全体平均4041円。マッチングアプリ大学の調査では、月のデート代は男性平均28353円、女性11427円。ナイル株式会社が2025年初頭に1148人へ実施した調査では、初回デートの予算は男性が1万円から2万円、女性が5千円から1万円が最多となった。
つまり初デートを一回こなすだけで、男性の財布から1万円札が当たり前に飛ぶ。月に4回会えば3万円。家賃と光熱費が上がり、米の値段が爆発し、コーヒー豆は前年比64パーセント上昇という世界で、それでも従来の感覚を維持しようとすれば、どちらかが必ず無理をする。
物価高でデート代が関係に与える3つの影響
影響その1、無言の偏りが蓄積する
男性が多めに払う構図は依然として根強く、ナイルの調査では初回デートの70パーセント超で男性が多めに支払っている。あけるさいむの調査でも、男性の72パーセントが自分が多く払うか奢ると回答した。一方で同じ調査の本音部分では、男性の57パーセントが割り勘がいいと答えている。表向きの行動と本音のあいだに大きな溝がある。物価が上がれば、この溝はもっと裂ける。
影響その2、デート頻度そのものが落ちる
総務省家計調査では、外食支出は名目で前年並みでも、実質ベースではコロナ前を依然として下回る水準にとどまっている。消費者は外食をやめたわけではなく、選別を始めた。デートも同じで、今週も会おうよが、来週はおうちにする、へ静かに置き換わっていく。会う頻度が落ちると、関係の体温も落ちる。
影響その3、価値観の地殻変動が顔を出す
あけるさいむのアンケートで、デート費用が家計を圧迫していると感じる男性は45パーセント、女性は35パーセント。約4割が圧迫感を抱えている。圧迫感は黙って消えない。ある日ふっと、もう少し抑えない、という一言で噴き出し、そこから金銭感覚の不一致が顕在化する。裁判所の統計でも、離婚理由としてお金関連は上位に居座る。デート代の小さな違和感は、結婚後の大爆発の予告編にほかならない。
実録、物価高の中でうまくいっているカップル・揉めているカップルのその後
揉めて別れた事例、心が貧しくなった女性
知人のAさん(28歳、女性)は、年収550万円の彼氏と2年付き合った末、昨年別れた。理由はデート代の積もり積もった違和感だった。最初は彼が毎回奢ってくれて、舞い上がっていたという。けれども半年を過ぎたあたりから、彼が会計のたびに伝票をじっと見つめ、ためらう一瞬が増えてきた。Aさんは申し訳なくなって自分から半分払うと言うようになる。彼はいいよと返すが、財布を出すのは結局Aさん。気づけば、奢られる嬉しさよりも、彼の機嫌をうかがうストレスの方が大きくなっていた。お金は貯まっていくけれど、心が貧しくなっていく感じだった、と彼女は言った。令和の物価高でこの心境に至る女性は確実に増えている。
続いた事例、3か月目で決めた緩いルール
逆もある。Bさん夫婦(30代、共働き)は付き合って3か月目の段階で、デート代を会った日の気分で多めに出す方を交代すると決めた。完全な折半ではなく、その日提案した側が7割、誘われた側が3割という大ざっぱなルール。会計のたびに細かく計算しない代わりに、月末にどっちが多めだったね、と冗談で確認する。彼らは2024年に結婚した。Bさんいわく、ルールを決めた瞬間に空気がふわっと軽くなったという。お金の話を一度でも腹を割って済ませたカップルは、後から来るインフレ波にも耐性を持つ。
成婚カップルの実データ
成婚率の高い結婚相談所クレシャスが2020年から2024年の成婚者50名に聞いた結果では、男性23人がほとんど奢ったと答え、女性も21人がほとんど奢ってもらったと答えた。同時に、3、4回に1回は女性が払ったと答えた男性が22人、女性が20人いた。完全な割り勘でも完全な男性負担でもなく、主は男性、たまに女性という揺れのある形が成婚カップルの最頻パターンだった。
揉めるカップルと続くカップルを分けるのは、金額そのものではない。話したか、話さなかったか、だ。
物価高時代のデート代、現実的な5つの対処法
私の結論は、令和のデート代は収入比で割る、誘った方が多く出す、家でも外でも変動制の三層で運用するのが最適解だ。完全割り勘も、男性全額負担も、もう古い。
対処法その1、収入比でざっくり割る
これは最強の現実解になる。彼の手取りが30万円、彼女が20万円なら、デート代の負担を6対4に設定する。きっちり計算する必要はない。ざっくりでいい。男女間賃金格差の現実があり、女性の平均収入は男性より低いという統計事実を二人の家計に持ち込むだけのこと。男だから女だからではなく、入ってくる金額に応じて負担を調整する。これに反論できる合理的根拠を、私はまだ聞いたことがない。
対処法その2、誘った方が多めに出す原則
今日のあの店行きたい、と言い出した側が、その日は7割を持つ。次に映画行こうと誘った方が、また7割。これを繰り返すと、誘いと支払いがバランスし、相手を呼び出すこと自体に責任が宿る。
対処法その3、月予算を二人で先に決める
月の外食デートは2回まで、ひとり5000円以内、その他はおうちデートか散歩。これだけで月の総額が読めるようになる。物価が上がっても、予算の天井さえ二人で握っていれば、無理な見栄を張らずに済む。
対処法その4、固定費的なデート支出を棚卸しする
サブスク、定期的に行くカフェ、移動のタクシー。気づかぬうちに、これは習慣だから、で積み上がる出費を二人で見直す。Netflixを別々に契約していたなら一本に統一する。同棲前でも合理化はできる。
対処法その5、現金で渡す勇気を持つ
長期交際で女性側が経済的に厳しいとき、男性がこれ今月の外食代の足し、と現金で渡す方法がある。下品だと感じる人もいるだろうが、月3万円のデート代圧迫感を抱える女性に何も言わずただ奢られるよりも、構造を共有した上で資金的に支える方がずっと健全だ。逆もまた然りで、女性の方が稼いでいるカップルでは女性が出す。役割を性別に縛り付ける時代はもう終わった。
お金をかけずに満足度を上げるデートの設計方法
外食一回の代わりに何ができるか。具体的に並べる。
おうちでの共同調理は最強のコスパ
スーパーで二人で食材を選ぶ買い物そのものが、すでにデートだ。餃子、お好み焼き、鍋、タコス、ピザ。包んだり焼いたり並べたり、手を動かしながらべちゃくちゃ話せる料理を選ぶと、3000円以内で外食2万円分の満足度が出る。私自身、付き合いはじめのころにレストランを重ねてくたくたになっていたが、思い切って家で韓国料理デーをやったら、それ以降の関係の濃度ががらりと変わった。
公共空間と公園を使い倒す
コンビニで好きなものを買って、レジャーシートを敷くだけのピクニック。晴れた日の芝生はそれだけでぴかぴかの舞台装置になる。都内なら新宿御苑も代々木公園も、500円以内で半日過ごせる。都庁の展望台、区の文化センター、自治体運営のスポーツジム、図書館。無料か数百円で空間を借りられる。雨の日の図書館デートで、お互いの読書傾向を覗き見るのは、レストランより深い情報をくれる。
サブスク映画館とミッション型デート
Netflixや配信サービス一本契約で、月1000円台でコンテンツが無限に出てくる。途中で一時停止しながら感想を言い合えるのは、シネコンより自由が広い。商店街の食べ歩きや近所の散歩を写真撮影付きでやり、今日は1000円以内でどこまで楽しめるかをゲーム化すると、節約という重い言葉が、二人だけのミッションへ反転する。きゅんとくる発見が必ず転がっている。
おうちデートを成功させる一点だけのコツ
部屋着のまま全部を済ませないこと。リラックスしすぎると緊張感が抜け、デートが日常に飲み込まれる。多少こぎれいな服に着替えて、照明を間接照明に切り替えるだけで、二人の空間が一段おしゃれな顔になる。
物価高は言い訳ではなく、話し合いのきっかけにできる
インフレ波を逆手に取る
私が言いたいのはこれに尽きる。物価高はカップルにとって脅威であると同時に、絶好の話し合いトリガーでもある。コメが67パーセント上がり、コーヒー豆が64パーセント上がり、ガストの定番メニューが軒並み改定された2025年は、デート代の話を切り出す口実をそこかしこに転がしている。最近マック上がったよね、から始まる雑談が、来月の予算会議に化ける。これを使わない手はない。
性別ではなく、二人の家計で決める
奢られて当然の女もいない。割り勘を強要する男もいない。性別ではなく、二人の家計と価値観で決める。デート代をめぐる感情のもやもやを言葉に変える勇気を持ったカップルだけが、令和の物価高を二人で乗り越えていく。逆に、お金の話をいつかねと先延ばす関係は、来年の春にはたぶん別の人と桜を見ている。
今日、相手に投げかける一言
きょう帰り道に、もしくはこの記事を読み終えた直後に、相手にこう聞いてみてほしい。ねえ、最近のデート代どう感じてる、と。返ってくる答えが、二人の未来図そのものになる。
