おごり続けたことを後悔している既婚男性は、おごったこと自体を悔やんでいるのではない。
おごり続けたせいで、確認すべきことを確認しないまま結婚してしまったことを悔やんでいる。婚活でのおごりは、関係を前に進めるアクセルとして機能する一方で、相手の本質を見えなくする目隠しとしても機能する。この二面性に気づかないまま入籍した男性たちの証言には、共通するパターンがあった。
おごり続ける婚活が見えなくしてしまう3つの情報
情報1 相手の金銭感覚
毎回こちらが全額払っていると、相手がお金をどう扱う人間なのかを観察する機会がゼロになる。財布を出すタイミング、金額への反応、割り勘の計算への態度、値段を見て注文するかどうか。これらはすべて、お会計に関与しない人からは見えない。
結婚は共同経営だ。相手の金銭感覚は、相手の年収より生活に直結する変数になる。その最重要情報を、おごりという習慣が遮断している。
情報2 相手の感謝と返礼の習慣
おごられたとき、人の反応は分かれる。言葉で感謝する人、次に何かを返そうとする人、当然のように受け取る人、受け取って終わりの人。
毎回おごっていると、この反応の差が日常の風景に溶けて見えなくなる。ありがとうの一言があるかないか、ごちそうになった次の機会に飲み物代を出そうとするか。こうした小さな返礼の習慣は、結婚後の家事・育児・労いの分担に対する姿勢と地続きになっていることが多い。
情報3 相手があなた自身を見ているかどうか
ここが一番重い。おごり続けていると、相手が好意を向けている対象が、あなたなのか、あなたの提供する体験なのかが判別できなくなる。
毎回いい店、毎回全額負担、毎回スマートな会計。その環境ごと好かれている場合、環境が変わった瞬間に関係の土台が揺らぐ。結婚生活は、いい店の連続ではない。スーパーの特売と光熱費の話の連続だ。そこでも隣にいたい相手かどうかを、婚活中に確認できていない。
結婚後に初めて表面化する、隠れていた問題
おごり続けた婚活を経た結婚で、後から噴き出しやすい問題には型がある。
入籍後、家計を合わせた瞬間に金銭感覚のズレが露呈する。交際中は見えなかった浪費癖、貯金ゼロ、リボ払いの残高。会計に関与させてこなかったツケが、共同家計という形で一気に届く。
生活水準の期待値が下がらない。交際中のデートの水準が、相手の中で結婚生活の基準値になっている。外食の頻度、旅行のグレード、プレゼントの相場。収入は変わっていないのに、交際中に演出した生活水準を維持することを暗に求められ、家計がきしみ始める。
そして、おごらなくなった途端に相手の態度が変わる、というケースもある。冷たい言い方になるが、おごりが関係の主成分だった場合、それを抜いた瞬間に何も残らないことが結婚後に判明する。これが最も深い後悔を生む。
実録:おごり続けて結婚した男性たちのその後
家計統合で凍りついたOPさん(36歳)のケース
婚活アプリで出会い、交際8ヶ月で入籍。交際中のデート代は一度の例外もなくOPさんが全額払った。彼女は毎回嬉しそうで、関係は順調に見えた。
入籍後、家計を合わせる話し合いで初めて彼女の通帳を見た。貯金は10万円弱、クレジットカードのリボ残高が60万円あった。交際中、彼女の服装も持ち物も上質だった理由が、そこでわかった。
OPさんが一番悔やんでいるのは、リボの存在ではない。交際中に一度でも割り勘やお金の話をしていれば、彼女の反応から何かが見えたはずだった、という点だ。おごり続けたことで、確認の機会を全部自分で潰していた。現在、夫婦でリボの返済計画を進めているが、信頼の回復には時間がかかっている。
確認してから結婚したQRさん(33歳)のケース
QRさんも婚活中は基本的におごる方針だった。ただし交際3ヶ月の時点で、意図的に一度だけ試したことがある。会計時に、今日は割り勘にしてもいいかな、と聞いた。
彼女の反応は、もちろん、いつもありがとうございます、だった。財布から千円単位まできちんと出し、その次のデートでは、今日のカフェは私に出させてください、と言ってきた。
QRさんはこの一往復で、感謝の習慣と返礼の感覚がある人だと確認できたと言う。結婚後の現在、家計の話し合いは月一回の習慣になっており、お金で揉めたことは一度もない。たった一回の割り勘の打診が、結婚後の何年分の安心を買った形だ。
おごりが主成分だったと結婚後に知ったSTさん(39歳)のケース
交際中、STさんは年収の高さを活かして高級店でのデートを重ねた。彼女は常に楽しそうで、プロポーズも一度で受けてもらえた。
結婚後、STさんの会社の業績が傾き、年収が三割下がった。外食を減らし、生活を引き締める提案をした日から、妻の態度が目に見えて冷えていった。あなたと結婚したのはこんな生活のためじゃない、という言葉が出たとき、STさんの中で何かが、ぽきっと折れた。
彼女が好きだったのは自分ではなく、自分が用意する生活だった。その可能性を、婚活中に一度も検証していなかった。現在、離婚協議中だ。
結婚前に確認すべきだった5つのチェックポイント
後悔した男性たちの証言を裏返すと、結婚前のチェックリストになる。
1. 一度だけ割り勘を打診して反応を見る
毎回でなくていい。一度だけ、今日は半分ずつでもいいかな、と聞いてみる。快く応じるか、感謝の言葉があるか、不機嫌になるか。この一回の反応に、お金と関係への姿勢が凝縮されて出る。
2. 低コストのデートを混ぜて温度を測る
公園を歩く、家で料理する、近所のカフェで話す。お金のかからない時間でも楽しそうにしているか、退屈そうにするか。高い体験がないときの相手の温度が、結婚生活での温度に近い。
3. 相手の家計の概要を結婚前に共有し合う
貯金額、借金やリボの有無、毎月の収支感覚。プロポーズの前後どちらでもいいが、入籍より前に必ず開示し合う。聞きにくいなら、自分から先に開示すればいい。相手が開示を渋る場合、その渋り自体が重要な情報になる。
4. 感謝と返礼の習慣を観察する
おごったあとに言葉があるか。次の機会に小さくても返そうとする動きがあるか。誕生日にこちらへの気遣いがあるか。返礼は金額の話ではなく、相互性の習慣の話だ。一方通行が常態化している関係は、結婚後も一方通行になる。
5. お金の価値観を会話の話題にできるか
将来の住まい、子どもの教育費、老後の備え。こうした話題を出したとき、一緒に考えようとするか、話を逸らすか。お金の話ができない相手とは、結婚後に必ずお金の話でつまずく。
これから婚活する男性へ。おごりとの正しい付き合い方
誤解しないでほしいのは、おごるなという話ではないことだ。
婚活の現場では、初回デートで男性が多めに払うことが好印象につながりやすいのは事実だし、気持ちよくおごれる経済力と振る舞いは武器になる。問題は、おごりを唯一の戦略にして、相手を観察する機会まで手放してしまうことにある。
おごりは続けていい。ただし三つだけ組み込んでほしい。交際が安定してきた段階で一度だけ割り勘を打診すること。低コストのデートを定期的に混ぜること。入籍前に家計の開示をし合うこと。
この三つを入れても、誠実な相手との関係は壊れない。むしろ深まる。壊れる関係があるとしたら、それはおごりだけで支えられていた関係で、結婚後に壊れるはずだったものが早めに壊れただけだ。早く知れたことは損失ではなく回避だ。
おごりをやめろではなく、おごりだけに頼るなという話
婚活でおごり続けた男性が結婚前に気づくべきだったことは、突き詰めれば一つに集約される。
おごりは関係を進めるが、相手を教えてくれない。
会計を全部引き受けるということは、相手の金銭感覚、感謝の習慣、自分自身への気持ちという三つの重要情報を、毎回未確認のまま先送りすることを意味する。先送りされた確認は、消えるのではなく、入籍後に利息つきで戻ってくる。
結婚は、いい店の予約が取れる男を選ぶ場ではなく、スーパーの袋を一緒に持って帰る相手を選ぶ場だ。婚活中のおごりがその判断を曇らせていないか、入籍の前に一度だけ立ち止まって確認してほしい。
確認して何も問題がなければ、自信を持って進めばいい。確認して何かが見えたなら、見えたいまが、人生で一番ダメージの少ないタイミングだ。
