フリーターだから結婚できない、という話ではない。
ただ、フリーターのまま結婚することには、正社員同士のカップルには存在しないリスクが複数ある。そのリスクを正確に知らないまま「好きだから大丈夫」で進むことと、リスクを理解したうえで覚悟して進むことは、まったく別の話だ。
この記事は、フリーターの彼氏との結婚を迷っている正社員の彼女に向けて書いている。結婚を諦めさせたいわけでも、無理に背中を押したいわけでもない。判断に必要な情報を揃えて、自分の足で答えを出してほしい。
フリーターと結婚したときの現実的なリスクを正確に知る
感情論を抜きにして、フリーターとの結婚に伴う現実的なリスクを並べておく。知ったうえで選ぶのと、知らずに選ぶのでは、後から来る後悔の質が違う。
収入の不安定さと将来の見通しの立てにくさ
フリーターの収入は、シフトの入り方・契約の継続・店舗の状況に左右される。体を壊したとき、店が閉まったとき、契約が打ち切られたときに、収入がゼロに近くなるリスクが正社員より格段に高い。雇用保険の加入状況によっては、失業給付もない。
子どもが生まれて妻が育休を取るタイミングで、夫の収入が不安定という状況は、家計として最もきつい組み合わせの一つだ。収入が安定していないと、住宅ローンの審査も厳しくなる。妻名義だけで借りる選択肢はあるが、その場合のリスクはすべて妻側にかかる。
社会保険・年金の問題
週30時間以上働いていれば社会保険に加入できるが、フリーターの場合は勤務先によって加入状況がまちまちだ。国民健康保険・国民年金を自分で払っているかどうかの確認が必要で、払えていない期間があると将来の年金受給額に直接影響する。
老後の話は遠く感じるかもしれないが、年金の積み立て期間は取り戻せない。30代でフリーターのまま国民年金の未納期間が長くなると、老後の収入格差は正社員とのあいだで数百万円規模になることがある。
世帯収入の上限が見えにくい
正社員であれば、勤続年数・昇給・昇格によって収入が上がる道筋がある程度見える。フリーターは時給の上昇幅が小さく、管理職に上がる道が基本的にない。働いた時間が収入の上限になるため、体力の落ちる年齢になるほど収入を増やすことが難しくなる。
フリーターのままで結婚が機能するケース・しないケース
フリーターとの結婚がすべてうまくいかないわけではない。機能するケースと、しないケースには明確な違いがある。
機能しやすいケース
妻が正社員として安定した収入を持ち続ける前提で、家計設計が成立している場合。共働きで世帯収入が十分に確保できているなら、夫がフリーターであることのリスクは下がる。ただしこの場合、妻が働けなくなったときの備えが薄くなるため、貯金と保険の設計を通常より厚くしておく必要がある。
フリーランス・個人事業として実質的に機能していて、収入が安定しているケースも別の話だ。肩書きがフリーターでも、実態として複数の取引先から安定した収入を得ている場合は、一般的なフリーターとはリスクの質が違う。
機能しにくいケース
正社員になる意思がなく、現状を変えようとしない場合だ。「なんとかなる」「いつか考える」という言葉が繰り返され、具体的な行動が何もない状態が続いているなら、結婚後も状況は変わらない可能性が高い。
また、妻が育休・時短・退職を想定しているのに、夫の収入だけでは家計が回らないという試算が出る場合も、機能しにくい。子どもを持つことを考えているなら、この試算は必ず事前にやっておく必要がある。
実録:フリーター彼氏と結婚した人・しなかった人のその後
フリーターの彼と結婚したMNさん(35歳)のケース
付き合い始めたとき、彼はカフェのアルバイトをしていた。音楽活動を続けながら生計を立てる形で、収入は月15万円前後。MNさんは正社員で手取り27万円ほどあった。
結婚を決めた理由は、彼が自分から家計の話を切り出してきたことだった。音楽だけでは生活が成り立たないことを認め、昼間は別のアルバイトを増やし、将来的に正社員への転職も視野に入れると話してきた。MNさんが感じたのは、現状への向き合い方の誠実さだった。
結婚後2年で彼は正社員に転職し、収入は大幅に上がった。音楽活動は週末だけ続けている。MNさんは「フリーターだから無理とは思わなかった。でも、現状を変えようとしていたから信じられた」と言う。
別れを選んだOPさん(32歳)のケース
3年付き合った彼はずっとコンビニのアルバイトで、収入は月12万円程度だった。OPさんが結婚の話を切り出すたびに「もう少し待って」という言葉が返ってきたが、3年間で状況は何も変わらなかった。
決め手になったのは、正社員への転職を一緒に考えようと提案したときの反応だった。履歴書の書き方を調べることも、求人を見ることも、面倒くさがって動こうとしなかった。「好きだったけど、この人と老いていく自分が想像できなかった」とOPさんは言う。
フリーターであることより、変わろうとしない姿勢が別れの理由だった、とOPさんは明確に言う。
正社員の彼女が確認すべき5つの判断基準
1. 現状をフリーターのままでいいと思っているか、変えたいと思っているか
正社員になりたいと思っているかどうか、それ自体より、現状に対してどんな意識を持っているかを見る。不満も危機感もなく、今のままでいいという感覚が強いなら、外から変えようとしても機能しない。自分から変えたいという動機がある人だけが、動ける。
2. 具体的に動いている証拠があるか
転職サイトを見ている、ハローワークに行った、職業訓練の申し込みをした。言葉ではなく行動があるかどうかを見る。「いつか正社員になる」という言葉は、行動が伴っていなければ意味を持たない。
3. フリーターになった経緯が何か
新卒でそのままフリーターになったのか、正社員を経験してフリーターに戻ったのか、体調や家庭の事情で正社員を続けられなかったのか。経緯によって、正社員に戻れる可能性と、戻ることへのハードルの高さが変わる。一度も正社員経験がない30代と、正社員経験があってブランクがある人とでは、転職市場での状況が大きく違う。
4. 家計の試算をふたりでできるか
結婚後の生活費・育休中の収入・住宅費・将来の貯金目標。これらをふたりで試算してみたとき、現実的な会話ができるかどうかを見る。数字が出たときに正面から向き合えるか、目を背けようとするかで、問題への姿勢がわかる。
5. 妻が働けなくなったときのシナリオを考えているか
病気・出産・育休・介護。妻の収入が一時的にでもなくなったとき、夫の収入だけで生活が成り立つかどうか。成り立たないなら、その期間をどう乗り越えるかの考えを持っているかどうか。このシナリオを一緒に考えようとするかどうかが、リスクへの意識の有無を示す。
正社員になってほしいと伝えるための言葉の選び方
正社員になってほしいと伝えることは、彼の生き方を否定することではない。ただ、言い方によって相手の受け取り方が大きく変わる。
責める形で言うと、彼は攻撃されている感覚になる。「フリーターのままじゃ結婚できない」という言い方は、条件を突きつけているように聞こえる。防衛反応が先に出て、話し合いにならない。
伝え方を変えるなら、自分の不安を正直に話す入り方がある。「将来のこと、正直に話したい。私が育休を取ったとき、生活が回るかどうかが不安で」という形なら、彼を責めているのではなく、ふたりの問題として共有している形になる。
そのあとの反応を見てほしい。不安を受け取って一緒に考えようとするか、責められたと感じて怒るか、話を流すか。返ってきた態度が、この人が問題に向き合える人かどうかを示す。
正社員になることを強制することはできない。でも、ふたりの将来への不安を正直に伝えることは、関係における誠実さだ。その会話ができたかどうかが、判断するための最後の材料になる。
